
2026年6月より、マレーシアの就労ビザ(Employment Pass:EP)の要件が大きく変更されることが、マレーシア内務省(MOHA)より正式に発表されています。
結論から言うと、「取得が難しくなる」というよりは、明確に“ハードルが引き上げられる”制度改正です。
この記事では、最新の公式情報をもとに、変更点・背景・注意点を正確に解説します。
1. 2026年6月からの主な変更点(公式発表ベース)
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① 最低給与要件の大幅引き上げ(最重要ポイント)

2026年6月1日以降に申請・更新されるEmployment Passは、以下の新基準が適用されます。
■ 新しい給与基準
| カテゴリー | 旧基準 | 新基準(2026年6月〜) |
|---|---|---|
| Category I | RM10,000以上(約40万円) | RM20,000以上(約80万円以上) |
| Category II | RM5,000〜9,999(約20万~40万円) | RM10,000〜19,999(約40万~80万円) |
| Category III | RM3,000〜4,999(約12万~20万円) | RM5,000〜9,999(約20万~40万円) |
👉 約2倍に引き上げられているのが最大の特徴です
また、
- RM3,000〜4,999の枠は完全廃止
- 最低ラインはRM5,000(約20万円)に引き上げ
となります
日本人は「Category III」に申請できるのか?
日本人がCategory IIIに申請自体は可能です。
ただ、不明点が多い現状ですがハードルが高く実務上は通りにくいケースが多いのが現実です。
Category IIIは外国人向けの制度なので日本人も含めて申請対象となります。
ただ、本質的には「比較的低スキル・低給与の外国人枠」であり、一般職や技術職が想定されています。
そこでマレーシアの基本ルール「ローカル人材で代替できる仕事は外国人NG」に抵触してしまいます。
したがって、「日系企業の対応業務」や「日本語対応が必須な仕事」が「日本人でなければならない理由」となり審査に有利になります。
一方、一般事務や英語のみのカスタマーサポートなどローカル人材に置き換えられる職種は審査が通らないケースに該当します。
② 新規申請だけでなく「更新」も対象
この改正は非常に重要で、
- 新規申請 → 対象
- 更新申請 → 対象
つまり、すでに働いている外国人も更新時に新条件を満たさないと更新不可になる可能性があります
③ 就労期間の制限(上限あり)
新制度では、カテゴリーごとに最大就労期間が設定されます。
- Category I:最大10年
- Category II:最大10年(条件あり)
- Category III:最大5年
👉 長期的な外国人依存を防ぐ意図があります
④ サクセッションプラン(後任育成計画)の義務化

特にCategory II・IIIでは、
- マレーシア人へのスキル移転
- 将来的なローカル人材への置き換え
を示す「サクセッションプラン」が必須になります。
👉 これは今後かなり重要な審査項目です
サクセッションプランとは具体的に?
「外国人のポジションを将来的にマレーシア人に引き継ぐ計画」がサクセッションプランです。
そのため、企業側は政府に対し、以下の3点を説明する必要があります。
- なぜ外国人を雇うのか
- いつまで雇うのか
- どうやってローカル人材に引き継ぐのか
また、マレーシア人スタッフを指定し、誰に引き継ぐのかという点も明確化する必要があります。
その次により具体的な育成計画を立て、外国人が「教育者」としての役割を担います。
- OJT(業務トレーニング)
- 定期的な指導
- スキル習得スケジュール
その後、育成計画に基づいて年間スケジュールを立て外国人がいなくても業務が回る状態を作るのがサクセッションプランです。
サクセッションプランの不明点(2026年3月現在)
- フォーマットの詳細 → 未発表(不明)
- 業種ごとの要件差 → 不明
- どのレベルで審査されるか → 不明
- 未達時のペナルティ → 不明
上記の項目はマレーシア政府のガイドライン待ちとなっています。
⑤ EP IIIの条件緩和(一部)
一方で、厳格化だけではなく以下の緩和もあります。
- EP IIIで扶養家族の帯同が可能に
- 一部事前承認プロセスの簡略化
👉 ただし給与要件は上がるため、実質的には難易度は上昇
2. なぜ厳しくなるのか?(背景)
今回の改正の目的は以下とされています。
■ 政策の狙い
- 外国人の「低賃金労働」を抑制
- 高度人材のみを受け入れる
- ローカル人材の育成促進
👉 「誰でも働ける国」から「高度人材限定の国」へシフトしているのが特徴です
3. 日本人への影響
■ 影響が大きい人
- 月収RM5,000〜9,000程度の中間層
- 新卒・若手社会人
- 営業・一般事務職
👉 更新できなくなるリスクあり
■ 影響が少ない人
- 外資系マネージャー
- IT・専門職
- 高年収人材
👉 むしろ優遇される可能性あり
4. よくある誤解(重要)
❌「6月からビザが取れなくなる」
→ 誤り
✔ 正しくは
👉 「一定の年収を満たさないと取れなくなる」
❌「全ビザが対象」
→ 不明・未確認
✔ 現時点で明確なのは
👉 Employment Pass(就労ビザ)のみ
※他のビザ(例:学生ビザ、MM2Hなど)への影響は
公式発表なし(不明)
5. 現時点で不明な点(重要)
以下は2026年3月時点で明確な公式情報が出ていない事項です。
- 業種別の例外措置の有無 → 不明
- IT人材などの特例優遇 → 不明
- 日本人向けの特別枠 → 不明
- 実務審査の厳格化レベル → 不明
👉 今後のガイドライン発表待ちです
6. 今後の対策(実務アドバイス)
①早めの申請
→ 2026年6月前に申請すれば旧条件適用の可能性あり
マレーシアの就労ビザ(EP)は企業(雇用主)が全てオンライン上で行います。
マレーシア国内の企業からオファーを取得し、給与・ポジションが確定後に企業がオンライン上で申請。
正確な審査期間は公式未公開ですが通常2~8週間で承認が下ります。
ビザが認められるとVisa With Reference(VDR)が発行されるので、その書類を使って入国する流れになります。
②給与交渉
→ RM10,000以上が一つの分岐点
Category IIは「高度人材」として認められやすい「中~高度スキル人材」ゾーンです。
ローカル人材との競合が少なく、外国人採用の正当性が高まるためビザ取得のハードルが下がります。
ただ、詳細な審査の運用基準は一部未発表となっています。
③職種選び
→ IT・専門職が有利
マレーシアは今、デジタル経済に投資を行っておりIT人材を歓迎しています。
例えば、エンジニアやデータ分析分野、専門技術職など人材が不足しているため外国人を雇う理由が成立します。
また、サクセッションプランに対応しやすく技術やシステム、ノウハウなど「育成計画」を作りやすいこともIT人材が有利な理由です。
④留学→就職ルート
→ マレーシア国内大学経由は引き続き有効
マレーシア留学を経た人材は英語環境に慣れ、マレーシア文化の理解があり、現地生活にもフィットしています。
そのことから、ローカル人材に近い存在として位置づけられ企業も安心して採用できることから就労ビザ取得に有利とされます。
また、マレーシアの大学ではインターンが重視されており、インターン経由で内定を獲得することもあります。
留学生専用のビザ優遇制度は公式に明確な優遇はありませんが、企業側が採用したい外国人人材と判断しやすいためインターン経由の現地就職という道もあります。
マレーシア就労ビザが厳格化されるというニュースは海外移住を考える上で大きな動きとなります。
まだ不明点も少なくない状況なので、政府発表があり次第情報を更新していきたいと思います。











