こんにちは!Kunyです
私は2022年3月の日本政府によるウクライナ避難者受け入れ表明後の4月から、日本語教室と文化交流イベントの月次開催、そして生活サポートを札幌で2年以上行っています。
本記事ではウクライナ東部に支援物資を送る経緯をご紹介したいと思います。
私は社内プロジェクト‐Ukraine Friends Project(UFP)‐と名付け協力してくれる日本人メンバーとともに形式的な支援を超えた友達の距離感で心のこもった取り組みを継続しています。
戦火を逃れて命を守るために、準備もままならない状態でウクライナから到着した日本。
言葉の壁はもちろん、文化や風習の違い、人々との交流機会をどう作るかなど乗り越えるべき課題を解決に導くためにプロジェクトをスタートしました。
Ukuraine Friends Project(UFP)の取り組み
(出所:HTB北海道ニュース2024年2月23日放送)
毎週末、日本語教室に札幌に住むウクライナの仲間が集まります。
日本語教室は初級コース(基礎文法と会話)と中級コース(日本語能力試験対策)の2クラスに別け、有資格の日本語教師2名が丁寧に授業を行ってくれています。
なおかつ斉一的な授業ではなく、有志の大学生がボランティア参加をしてくれて会話練習や文法解説、漢字の書き方など個別対応をしています。
グループ授業と個別授業を組み合わせたハイブリッド型のクラスをこれまで2年以上続けてきました。
(2023年イースターの様子)
UFPの活動では言語学習を通じて多くの情報を交換するので、教室を通じて生活上どんなお困りごとがあるのか把握することができます。
例えば「歯が痛いけど歯医者が怖い」「ビーツはどこで手に入るのか」「服のボタンが外れて修理したい」など自分からは相談しにくいけど、会話の中で気が付く生活上の困難を知る大切な役割が日本語教室にあります。
そして毎月行う文化交流イベントの中で文化理解を深めて生活上の課題を解決したり、集まる仲間同士が相談しやすい雰囲気を作っています。
したがって、日本語教室と文化交流イベント、生活サポートは一つのセットとして捉え、取り組みを続けています。
この活動を初めて1年目は生活上に起こりうる小さなお困りごとのサポートが多くありました。
しかし、日本での避難生活が2年目が過ぎてからは就職や大学進学など人生設計に関わる大きな課題(言葉の壁)の相談が増えてきました。
ウクライナ東部の病院、必要物資の慢性的不足
そのような中、2023年10月3日に一人のウクライナの仲間から寄せられた大きな相談がありました。
それは、「ウクライナ東部の軍の医療機関では慢性的に下着、パジャマ、Tシャツ、パンツ、包帯、消毒液、手術用の糸、傷口を留めるステイプラーが不足している。
日本でそれを集めて、ウクライナに送ることはできませんか?」という相談です。
彼女の母の友人が軍の病院で務めており、このような相談を受けることになりました。
日本に避難しているウクライナの人々をサポートするのとは異なり、最前線の病院と負傷者のサポートという、本来国際NGOが行う領域の相談を受けたわけです。
これを実現するためには①輸送ルートの確保②物資調達③輸送費用の調達の3点をクリアしなければなりません。
この支援を実現するための負担は大きいですが、現地では生活に必要な最低限のものでさえ手に入らないという過酷な状況が続いています。
それに心を強く痛めているウクライナの仲間と話し合い、気持ちを固めてウクライナ東部の病院へ支援物資を送ることを決めました。
公的機関に相談するも...
初めに行ったアクションは公益財団法人札幌国際プラザに電話相談をすることでした。
電話相談をしてみると、ウクライナ関連のサポートを行う第三セクターに相談してみてはどうかと回答がありました。
第三セクターに相談してみると、国際NGO一覧のリンクとともにそれらの機関に相談してみてはどうかと回答がありました。
最終的に、日系の国際NGO3団体に現状報告と支援要請を送りましたが返事はありませんでした。
外部の機関を頼って問題解決する道が一旦閉ざされてしまい、UFP内部で①輸送ルートの確保②物資調達③輸送費用の3点を達成しなければならない状況になりました。
そこで、2023年12月16日に北海道に長年住み企業経営をしているウクライナの男性を日本語教室に招き、輸送ルートの相談をしました。
そこで明らかになったことは次の3つのポイントです。
- SAL便(海上輸送)は追跡できず物資が届かないことがある
- EMS(航空機輸送)は以前1週間で届いたが、現在は1か月以上かかることがある
- 空輸で直接ウクライナへ物資を届けることはできず、ポーランドまでは空輸でそこから陸送となる
ウクライナ東部へ物資を輸送する独自ルートの確保
日数はかかるものの日本郵便のEMSで輸送できることを知り、公式サイトを確認してみました。
すると、日本郵便はチェリノービリ、ザポリージャ、ヘルソン、ドネツク、ルハンシク、クリミア半島への郵送を停止していることがわかりました。
つまり、東部の最前線の病院へは輸送したくても直接送ることができないことを意味しています。
しかし、言い換えるとチェリノービリ、ザポリージャ、ヘルソン、ドネツク、ルハンシク、クリミア半島の6か所の手前までならEMSで物資を輸送できると言えます。
UFPの日本語教室に通っていた一人の女性が2022年12月にウクライナのドニプロ、チェルカースィに帰ることを決断しました。
彼女が住む場所はウクライナ東部に近く、帰国の決断を聞いたときは心配でなりませんでしたが、今は彼女は家族との生活を大切に暮らしています。
物資のルートを確保するために久しぶりに彼女と連絡をとり、日本からの支援物資をチェルカースィの彼女の自宅へ郵送、陸送運賃を彼女の銀行口座へ送金し、東部の病院まで陸送してもらう約束をしました。
これにより、独自の輸送ルートを切り開くことができましたが、次に支援物資と送料の調達をしなければなりません。
ウクライナ東部の医療機関で不足している物資の調達
物資と資金の調達にあたり、札幌市内の市民団体の協力を得て実行することができました。
まず、不足している物資の中で優先順位が高いものは傷口を覆うための「包帯」です。
しかし、包帯の寄贈を呼びかけることは医療機関の協力がない限りハードルが高いと判断。
そこで、どこの家庭にも眠っている贈答用のタオルに着目しました。
使われていないタンスの奥の贈答用タオルを集めて、包帯代わりに現地で使ってもらおうという発案です。
私のSNSでタオルの寄付を呼びかけたところ、日本の各地から小包が届きました。
小包の中には心温まるお手紙も入っていたり、タオルの他にTシャツやシーツもありました。
日本らしいお相撲さんがデザインされたタオルも関西の友達から送られてきました。
SNSで募った物資と市民団体の協力で集めた物資を合わせると大型の段ボール3箱を超える量となり、一時支援物資の寄贈を中止することにしました。
国際NGOなどと異なり、民間のプロジェクトなので送料の予算はあっという間に使い切ってしまう恐れがあることが中止の理由です。
ウクライナ東部へ支援物資を輸送するための送料の確保
輸送ルートと支援物資が揃いましたが、最後に送料を集めなければなりません。
物資輸送の費用を捻出するために、市民団体に集まった寄付金とUFPで働きかけた寄付金を合わせて予算を立てることにしました。
UFPの働きかけとして、小さなクラウドファンディングのような仕組みを作ることにしました。ウクライナには家族を災いから守るお守り人形、モタンカ人形があります。
モタンカ人形は針やハサミのような鋭利なものは使わず、布と糸を巻いて作る伝統人形です。
(小さなクラウドファンディングを提案してくれた大畠拓馬さん)
UFPに携わる日本人チームと札幌で生活をするウクライナの仲間が一緒に心を込めてモタンカ人形を作りました。
送料の寄付を一口3,000円で呼びかけて、寄付をして頂いた方にモタンカ人形をリターンするという小さなクラウドファンディングを行いました。
ウクライナ東部へ支援物資の輸送を実現
そのようにして、2024年2月28日に第1便を郵送しました。
まだまだ寒い時期でしたので、重量がかさみましたがカイロも同梱しました。
また、この計画を支持してくださる女性の一人が軍の病院で働くナースの苦労を思い、生理用ナプキンも寄付してくれました。
それらの支援物資第1便は約2週間後に現地に到着しました。
その後、3月18日に第2便を輸送しました。
第2便は17日間をかけて4月4日にザポリージャの病院に到着しました。
寄付してくれた人のお名前とメッセージをリストにし、段ボールの中に添えてあります。
そして2024年5月15日に第3便を郵送しました。
段ボールは最も大きなサイズを使い、重量は22.670キログラム。
空輸のEMS送料は50,800円でした。
チェルカースィからザポリージャの軍の病院までの陸送費用と中継してくれる友達へのお礼を合わせて5,000円分のユーロをWISEで送金しました。
日本郵便の追跡を確認すると、おそらく5月31日か6月頭に第3便目が現地に届くと考えられます。
協力していただいた皆さんの思いが現地に届き、必要な物資とともにその傷を癒すことができれば幸いです。