いじめを無くすことは可能なのか?社会心理学を考察
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時代や国に関わらず存在するいじめという問題。

私たちはどのように立ち向かっていけばよいのか、
社会心理学の研究を踏まえて考えてみようと思います。

そもそもいじめはなぜ生まれるのか?

人間はどのような特性を持っているのか
という立ち位置から考えて行きましょう。

 



「人間とは社会的動物である」

とアリストテレスは言います。
では、社会とは何でしょうか?

「社会=共通の信念や習慣を持つ人々の集合」

例えば、「男社会」という言葉がありますね。

それは、生物学的に男であるということが重要なのではなく、
男性特有の行動がお互いに承認されて「男社会」と呼ばれるのです。

ここで、人間社会を構成するために重要なポイントがあります。
それは、「共通」が社会と成立させるために必要だということです。

「社会的動物」と名付けられる人間は
集団生活を基盤とする社会を作り、そのために「共通」であることを重視します。
社会は集団生活の基盤であると同時に、
それ自体が「いじめ」の原因でもあると言えます。

集団を考える上で、集団規範という強い力の影響を考えなくてはなりません。
殆どの場合、いじめは多数派が少数派に対して行うからです。



・集団規範

=集団の大多数の成員が共有する枠組みや思想様式

通常は意識されにくいが自分と他の成員がの行動が異なる場合、
少しずつ修正されていく。
※Norm(規範)を形容詞にするとNormal(普通)になる


新しい学校、職場、サークル、団体に入った時あなたはどのような行動をとるでしょう?

例えば、大学に入って初めにすることは履修登録、サークル選びや教室のどこに座るか・・・など。

この時に、周囲の他者を参考にして行動しない人はいません。
人は無意識に他人を参考にして自分の行動を変えているのです。

また、新しい職場で働き始めた場合を考えてください。
新しい職場では新しい職場の集団規範があります。

例えばKuny's cafeというカフェで働き始めたことを想像してください。

そこには、オーダーの取り方やコーヒーの挽き方の他に、
従業員のAさんには言ってはならない言葉や
チーズ入りサーモンジャーキーをオーナーにプレゼントするととても喜ばれるなど、

 

目に見えないルールが存在しています。

集団規範とは集団内の多数派が、皆こうするとわかっていることです。

普段意識することは、なかなかできませんが、
そのグループに属しているのならばそうするとみんなが思っていて、
あなたは集団成員として期待される行動の標準を示します。

これは目に見えないルールです。
この目に見えないルールが強烈に人の行動に影響を及ぼしています。


・社会心理学では数多くの集団規範・集団圧力の実験が行われ
そのパワーの強さが確認されている(実験内容はここでは割愛する)

→実験結果、3人以上による斉一性による同調圧力があれば集団圧力が働く。
(つまり、数が多ければ多いほど集団規範が作られやすいのではなく、
3人以上が「これが普通なんだ」と全員一致していることで、
自分の意見がたとえ正しいとしても、間違った行動を取る可能性がある。)

→集団規範のパワーとは人々が想像しているよりも強力に個人の行動を変える。


この実験結果を考えるといじめの恐ろしさが見えてきます。

自分の意見に自信が持てない時、あるいは自信があっても
3人以上の人々が「これが普通」であると一致しているだけで、
その他の大多数が行動を合わせようとするのです。

「いじめじゃなくて遊んであげてるんだ」
そう3人が一致した主張をしていると、
それが集団内で普通に思えてくるということです。

そのようないじめにどのように立ち向かえば良いのでしょうか?
ここで、いじめの問題自体の解決を目指した研究を紹介します。


【いじめの四層構造】(森田)

1.加害者(いじめっ子)
2.被害者(いじめられっ子)
3.観衆(いじめを見て、はやし立てている子=いじめを是認)
4.傍観者(見て見ぬふりをする子=いじめを黙認)
これは80年代、教育社会学の森田洋司さんによって行われたいじめの研究です。

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いじめっ子を囲んで観衆が重層的にいるが、もっと多いのは傍観者ですね。
この実験結果を以下に箇条書きします。

 


→世界中でこの研究を調査・分析した結果同じ分析結果が出た
・いじめの出現率は傍観者の数と正の相関
・加害者の数とは関連なし
・仲裁者がいるといじめの出現率は下がる

→傍観者が作りだす集団規範
・学校の中のいじめを許容する雰囲気
・仲裁に入れない雰囲気
・「自分がいじめられるのではないか」という不安

→いじめを防ぐには加害者を注意するだけでなく、
傍観者がNOと言える雰囲気を作ることが重要


現実的にどのように傍観者がNOと言える雰囲気を作れるのか?

という問いは残ります。

しかしここで注目してもらいたいのは
「・仲裁者がいるといじめの出現率は下がる」
という部分です。

これは、いじめの被害者に数人の友達が止めに入る重要さを意味しています。
集団規範・集団圧力の強さに関しては、既に説明しました。

大多数が普通を創る→いじめの加害者と傍観者が正の相関
人間社会とは、多数派が少数派に影響を与えるだけではありませんよね。
・・・であるのならば、どのように少数派が多数派を変えれるのでしょうか?

結論的に言うと、少数派は「筋の通った」一貫性のある行動で多数派を変えます。
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モスコビッチの研究
「革新は常に少数派によってもたらされる」
実験名:ブルー/グリーンパラダイム


変革には少数派による行動の一貫性が重要。

つまり「少数」≠「単独」
多数派を変える為には1人でなく、2人以上がNOという行動を取り続けることで多数派の行動が変わる。
「いじめじゃないよかまってるだけだよ」
といういじめの加害者。
それを取り囲む観衆と傍観者。

そこに、いじめの被害者と仲が良い2人以上の友人が、
一貫して「いやいや、いじめはだめだろ!」
「おいおい、その接し方はないだろ!」と仲裁に入り続けることで、
しだいに傍観者が仲裁者・被害者の味方になり、いじめがなくなるということを社会心理学の研究から導くことができます。

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